トークセッションという魔法

SPOONはじめました。 [第3回]
SERIES: 

対話を楽しむメディア『SPOON(スプーン)』を立ち上げました。

まず最初はこのメディアを立ち上げるに至った僕の考えなりを綴りたいと思います。

このシリーズの登場人物

川村健太
スプーン編集長

このシリーズの目次

バラエティに富んだ人間関係をもたらしてくれた大学時代以降、僕は人との距離感を縮めるためにとにかく会話を重ねるようになりました。しゃべりあった分だけお互いのあいだに流れる特有の空気感があり、それに触れる時間が心地よいものでもありました。そしてそれは同時に絆のようなものであり、対話を通じて共有した時間はお互いを裏切りません。

しかし、別に僕が特段おしゃべりだというわけではありません。僕は僕自身のことを自ら積極的に赤裸々にさらけ出せるタイプの人間でないことは自分自身がよくわかっています。つまりは僕は人の話を訊くのが好きなのです。人の知見を引き出すことが好きなんだと思います。

相手が対話を通じて差し出してくれるものがあるならこちらも持っているものは対話を通じて惜しみなく差し出す。こちらが先に差し出せば相手も差し出してくれるだろうと感じればやはり惜しみなく差し出す。そうやってお互いが頭の中にプカプカ浮かべていることばを出し合っていると、時々目に見えないお互いが持っている糸がきれいな結び目をキュッとつくるような瞬間が訪れるんです。

自分の口から発したことばなのに、本人がハッとさせられるような不思議な感覚。頭の中で漂わせていたものがことばで言語化された瞬間。それは意図して自分で定義することができたのではなく、相手との掛け合いによって導き出されたものです。

まるでそれはジャズセッションのような…。ことばとことばの掛け合いが思いもよらぬ方向へと連れていってくれることがあるのです。

そのトークセッションという魔法に僕はすっかり魅了されてしまいました。「こんなことについてしゃべろうよ」って話し始めたのに、おわる頃には何だか大発見をしたみたいな充実感に包まれることだってあるのです。

(第4回につづきます)