会話を通してあなたが見えてくる

SPOONはじめました。 [第2回]
SERIES: 

対話を楽しむメディア『SPOON(スプーン)』を立ち上げました。

まず最初はこのメディアを立ち上げるに至った僕の考えなりを綴りたいと思います。

このシリーズの登場人物

川村健太
スプーン編集長

このシリーズの目次

僕の大学生時代の友人との過ごし方はほとんどがおしゃべりでした。大学生になると今までにはなかった”飲み会”というシチュエーションも追加されるわけですが、これもおしゃべり好きにとっては格好の余暇でした。僕自身、お酒はまったく飲めません。でもじっくりとお互いの深い部分にまで話が及びやすい”お酒の場”というのは、お昼にカフェでする話とはまた違って面白く、僕はそういった場所によく足を運びました。次第にじっくりと向かい合った相手の話を聞くことができる”サシ飲み”を好むようにもなりました。授業のスキマ時間ができては大学の近くのカフェや喫茶でしゃべり、夜は居酒屋で飽きもせずにずーっとしゃべったりしたものでした。

進学した大学の環境の影響が大きかったこともあると思います。おそらく本来の実力では行けることがなかったであろう大学に、幸いにして高校3年間の成績がよかったために受験できた推薦入試で合格できたという、細い糸を手繰るように進学できたおかげで、僕の視界は思い切り広がりました。僕の進学した大学では県外出身者の占める割合が多く、知り合う人ひとりひとりのバックボーンが違いすぎて自己紹介だけでも楽しさと驚きの連続でした。実際、一番最初に話しかけてくれた同じ学部の女の子は東京在住の帰国子女で、去り際にハグをしてきたことに目を丸くしたのを今でも覚えています。僕のこれまでの拙い人生経験のなかでそんな距離感のコミュニケーション手段は存在しませんでした。「絶対これから楽しくなるだろうなあ」と待ち受ける大学生活に文字通り胸躍らせていました。

大学はとにかく人が多く、同じ学部の同級生に加えて所属するサークルの仲間を合わせたら「友だち100人できるかな」じゃ効かないくらいに1年生のあいだだけでもそれはたくさんの友だちができました。そのひとりひとりが優秀で、何かに秀でた魅力を持っていて、毎日通うキャンパスはキラキラしていました。たまたまある講義で隣同士だったから、食堂で一緒のテーブルだったから、そんな些細なきっかけから相手のいろんな話を聞いている時間がとても愛おしく思えたものです。当時はしきりに「1日24時間じゃ足りない!」って周囲に言っていたような気がします。

対話をしていると自分のなかであるイメージが浮かびます。それは、様々なバックボーンを持った人といろんなジャンルの話をあっちいったりこっちいったりきたりしているうちに、会話の地層のようなものが積み重なっていって、だんだんと僕にとっての相手の人物像が出来上がっていくのです。それは自分だけが見ることができる宝物のような気がしていました。僕だけが知っているあなた、という存在。

いま、大学時代に戻ってあの頃知り合ったみんなの会話や対話をもう一度手にすることができたら、どれだけ嬉しいことでしょう。

(第3回につづきます)